12月21日(水)に、設備業の方々をお招きして意見交換会を開催いたしました。(新型コロナウイルス感染症対策として会場参加者の人数制限を行いました。)
まず、委員会・分科会の活動紹介が行われ、その後「消防防災DX推進委員会」「設備共通EDI推進委員会・ITES分科会」「設備業DX推進委員会」の取り組みに対して、活発な意見交換が行われました。
設備業の方々からは現在の状況について、また委員会からは設備業の方々に尋ねたいこと等を詳しく聞くことができました。
意見交換会で出された意見の一部をご紹介いたします。
日時:令和4年12月21日(水)14:00~18:00
開催方法:Zoomによるオンライン開催
システムズナカシマ東京支店3F会議室
消防防災DX推進委員会
テーマ:電子申請から始まるDX
■各エリアの現在の状況について
- 関東エリア/東京はまだ消防庁管内の電子申請が、業務に関わる点検や工事後の設置届等の工事関係の届出の受付が始まっていない。さいたま市、横浜市で行ったことがある。
- 東海エリア/名古屋市は10月から始まった。元請けと協議した結果、紙ベースでの今まで通りの点検申請を行っている。
- 関西エリア/自社では電子申請は行っていないが、神戸市では、ぴったりサービス経由で申請ができる。大阪については郵送のほうが楽なので紙で申請を行っている。
- その他のエリア/伊豆地方での電子申請はまだできていない状況である。箱根・小田原地区などの建築の防災設備の検査は横浜が管轄であるがサイトから電子申請を行っている。移動時間を考えると便利である。消防の着工設置や点検の報告書は紙で行っている。
■電子申請のメリット
- わざわざ出向かなくても良い、その分他の業務ができるなど移動距離、時間短縮になる。
- 郵送が二年前からできるようになったので、消防署に出向かなくても良くなった。
- 紙の保管量が少なくなる。郵送時の切手代等の経費がかからなくなる。
■電子申請の課題、心配事
- 業者が、直接提出できる法定書式は少ない。設備業者が名前まで書いて出せる状況ではなく、本来は、客側での提出となっている。誰が申請者か、現在のように曖昧な状況では、進まないのではないか。
- データ上でサイン(署名)するシステムがないと進まないのではないか。
- ユーザー側が慣れていない場合や紙ベースで欲しがる人もいる。
- 社内教育については、ワークショップなどで教育をしているが、IT人材を採用する人件費が割高になるのが悩みである。ただ、ひとり採用すると業務効率のスピードは、アップするのは肌感覚であるが実感している。
■今後の展開について
- 民間の業界がDX推進をするだけでなく、行政も効率化しないと進まない。
- 紙とデータと二つあると業務が増えてしまうので、そのあたりも解決していかないと維持台帳も電子化は進まない。電子申請でしか受け付けないぐらいでないと、進まない。
- 関われる人がいるなら、現場の人の話をきいて、一緒に開発しないと意味がないのではないか。
- アプリのようにして電子印鑑も添えた形にならないと意味がないと思う。
- 中途半端に進めるのはよくない。このような場所で民間の意見をまとめて行政に意見をあげていきたい。
テーマ:社内業務について
■社内のデジタル化、課題
- 社内でのデジタル化は、コストもかかるので一度にはできないのが現状である。
- 過去のデータ(紙の報告書)をどうやって電子化するか、またその必要があるのか考えている。
- 電子申請するだけでなく、他の管理しなくてはいけない資料も膨大にある。データは、ふとした時に必要になるのでどこまでデジタル化を進めていくか社内ルールもできておらず課題である。
- クラウドを利用した報告書作成を使用、最長三年以上は保管している。
- 個々のITリテラシーの差があり、わかる人の業務負担か増えるのが課題である。
- ファイル名、保存場所など統一化していない。誰もわからない状況にもなることもあり、社内教育の重要性を感じている。
- ペーパーレスがきっかけで、サーバーを5つ立て、デジタル化を実施。顧客のデータを守ることも重要と思い運用している。それらを運用するデジタル人材に関しては、コストがかなりかかるので、その分、メリットが見えてないと投資するのは難しいのではないか。
- 顧客管理、会計管理のデジタル化を実施。
- チャットとしてラインワークス、スケジュール管理も行っている。バックオフィスのデジタル化は整備されてきた。それを使用して営業のデジタル化を進めていけば、かなり業務効率の改善につながると思っている。
- ホワイトボードでスケジュール管理をしていた超アナログの状況だったが、サイボウズのキントーンを導入し、見積、請求、スケジュールを一元管理するようになった。
- 一元管理するようになったら、そこを覗きに行けば全てわかるという状況を作っている。従業員の世代間でITリテラシーの差がある。
- 勤怠管理からデジタル化に手をつけた。60歳代でも簡単に使えるものを取り入れたところ運用半年、順調に稼働している。工程管理なども進めていきたい。
■今後について
- お客様側のデジタル化まで請け負った新しいサービスを提供し、ビジネスチャンスにしたい。
- お客様の困りごとを身近に解決できるようなものをデジタルやDXでしたい。
- クライアントである防火管理者を巻き込み、我々のサービスや業務のメリットをデジタルを活用してもっと広めていきたい。
- セキュリティ的な課題もあると思うが、API連携でマイナポータルと直結できると効果的であると思う。
- 官民連携して色々な業務をもっと効率化していくことが日本全体の課題でもあるかと思う。
設備共通EDI推進委員会・ITES分科会
テーマ:設備業でEDI(受発注のペーパーレス)は実現するのか?!
【委員会より】
EDIの範囲は広いが、その中で業者間のやり取りをクラウド化することでペーパーレスが実現するのか、これから始まる電子帳簿保存法対応に対して業務の効率化や課題解決ができるのか尋ねたい。
■受発注の課題と現状について
- スマホで勤怠管理を行っている。最初は、単純に経費削減のために紙をなくすことから始めた。
- 社内で同じスマホを支給、60代の社員に20代の社員が使い方を教えたりと社員のコミュニケーションが良くなった。
- キントーンを使用しているので、注文書、見積書、発注書、請求書まですべて印刷しなくてもFAX送信できている。
- 顧客によっては、まだFAXを使用している。全部をデジタル化するのは無理だと思うし、使えない人を排除するのはよくない。
- 基幹システムとしてパナソニックと開発したシステムを使用。顧客とも共有している。特殊な商材も多くあるので活用されていない状況ではあるが納品明細などデータのやり取りについては使用している。電材卸会社では、まだまだFAX・電話が主流だが、世代も代わってきているので進めていければと思っている。
- 基本的には、受発注はほぼメールだが、現場で足りないものは、LINEで型番などの写真を送って発注している。証拠を残すように徹底し、なるべく現場を止めずに、手戻りなく、在庫にしないことを念頭に動いている。
- 社内的には、100%ペーパーレスを目指している。発注ミスをなくすため、メールと電話でWチェックをしている。現場から直接発注することも極力避け、社内で営業サイドから発注するようにした結果、現場調達による在庫過多が改善した。
- 注文番号、工事番号など、キントーンで管理番号を付けて管理している。
- 法人から個人の顧客までいるので、統一性を持たせるというのは難しいのが現実。発注は、紙ベースで行っている。なかなかFAXから抜け出せない。
- 受注は、FAX、電話、メールなどから。大きな建設会社とは、EDIでやり取りをしている。
- 発注は、LINE、メールを使用しており、なるべく電話をなくす方向で行っている。
- 写真、図面などのお客様とのやり取りは、メール、LINE、メッセンジャーを使用している。
- 未だに公共関係とはFAXでやり取りが行われている。完成検査を受けるために紙が必要である。
- 材料の発注は基本的にはメール、LINE、現場で急遽電話で発注する場合もある。
- 注文書等のやり取りは、ゼネコンに対してはEDIを使用。顧客に従い色々なシステムで対応している。電材の注文は、基本メール(一部FAX)で行い、現場発注の場合は現場から管理者へLINEし、管理者がメールで行っている。
■共通EDIをもし導入した場合、効果・懸念事項について
- 使う側がいいものとして開発しないと、使わないのではないだろうか。
- メーカーや型番など全部入れないと使えないのではなくて、職人さんが一瞬でわかるものでないと使われないと思われる。スマホから直感的に使えることが重要ではないか。
- コロナ禍でのZoom使用のように使わざるを得ない状況になると、みんなが使うようになるのではないか。
- EDIについていまいちイメージが湧かない。例えいい仕組みができたとしても、新しいものに取り組むことにアレルギーがある。使ってもらうためにどうしたらいいか、国を動かして強制化することも必要なのでは。
- スピード感と使いやすさが重要。EDIにスピード感のイメージが湧かない。
- LINEのように、まずは無料で手厚くサポートし、追々費用を取る仕組みを考えてみてはどうか。
■ITESについて
- 見積りの精度が高いと原価管理ができるので、その方向で良いと思う。
- キントーンの中で見積りができれば、便利。新しく作るだけでなく、あるもので使いたいのでキントーンに入れ込むことができればいいと思う。
- ITESで取り込める写真管理や工程管理ソフトの種類がもっと増えたらいいと思う。
【委員会より】
ITES対応ソフトは、現状当会の協賛パートナー企業の一部のソフトのみだが、今後増やしていきたい。
実証実験に入っていくので、意見をもとに使いやすいものを作っていきたい。
設備業DX推進委員会
テーマ:設備業におけるDXの進め方
【委員会より】
DXを進めるにあたり委員会として参考に進めていただけるように提言書の作成を行っている。まずはすぐに使いこなせる・すぐに導入できるといった「スモールDX」のようなことを第1ステップとして中堅クラスの設備業向けに進め、事例を作っていくことを考えている。これについて意見を聞かせて欲しい。
=提言書とは=
設備工事業の方々のご意見や意識調査の結果等を踏まえ、設備業でDXを進める上で必要なポイントを整理したもの。
DXを進める上で、何から手をつけてよいか分からないとか、業務課題を精査しDXを推進できる人材がいないなどの課題を抱えている設備業の方に向けてDXにどう取り組めばよいか迷っているときや、新たな取り組みに挑戦するときのヒントとして活用してもらうことが狙い。
■DXを進める上で、具体的なビジョンはあったのか
- DXを進めようではなくて、結果としてたまたまなっていた。みんなが便利に使えて幸せになったもの、気が付いたらあったという状況。
- タイムカードの無駄や毎月の給与計算による残業時間を解消しようと選んだのがキントーンによる勤怠管理の導入であった。
- キントーンでアプリを作ることができるので、車両管理アプリなど欲しいと思ったアプリを社員が自発的に作っている。アルコール検査、発熱などの管理もできている。
- 自発的に業務改善に取り組む社員には手当をつけるようにした。
- DXというよりは、作業効率を上げたいので始めたことがきっかけ。
- 太陽光の修理修繕について注文依頼書が各メーカーにより違うので、依頼先に報告書、作業書を全て統一のフォーマットにしてもらいキントーンで管理をしている。必要最低限の導入コストで収まっているので、満足している。
- タスク管理については、作業の見える化を行い、誰がどこにいても見えるようにしている。
- 簡単に言えば楽をしたい、社員に負担をかけないように必要性を感じたところからITを導入している。ただポイントポイントでの導入になっているので、今後そこをどう連携してさらに効率化していくのかが課題。
■DXを進めるにあたっての業務の棚卸についてどう思うか
- 三年前から支援を受けてキントーンを導入。社内担当は、社長と事務員。以後オンラインで支援をしてもらっている。改善ミーティングを月一で行っている。キントーンの見直しが、結果的には、業務の見直しの場になった。
■社内を巻き込んだ例
- 社員全員で業務の洗い出しを行い、話し合いを行ったら社員の意識が変わっていった。
- 部門ごとにテーマを与えて業務を洗い出すことで、課題の把握ができた。
- 勤怠管理の導入時に、部署で業務の洗い出しを行った。何か問題が起きた時に、見えていなかったものが見えてきた。
- 月1回の会議の中で、現場、営業、総務のそれぞれで業務の洗い出しを行っている。社員の目線でテーマを決めて話し合いを行い業務改善につなげている。
■社内の協力体制
- 誰でも使えるシステムを作るというのを念頭においてやっている。
- キントーン、ホームページリニューアル、それぞれのチームリーダーに最高齢の社員をおいてみた。実際に中身を作るのは、若手であるが、旗振り役を行うことにより、最高齢の社員も詳しくなってきた。
- 「だれでもできる」が大前提にあるので、スマホでLINEを使えるレベルの人が簡単に使えるシステムを探した。
- 業務に支障の出ない範囲で毎週ミーティングを行い、社員全員でルールを決めた。その結果、時間はかかったが、特に教育などせずにみんなが使えるシステムができた。
- システム導入の検討に入る際、固定観念を俯瞰して見させるために、電気工事の業務から一番遠い事務の人から人選を行った。また、現場が忙しいという言い訳が出ないように人選を行った。
■提言書について
- 直観的にわかりやすいものの方が受け入れてもらえるのではないか。
- 成功事例など示されたもので、とっかかりさえつかめば、興味を持ってもらえて重い腰が上がるかもしれない。
- 立ち止まっている会社さんに踏み出してもらえるようかみ砕いた内容であるといいのではないか。
- 特定のソフト名を出さずにプロセスやこういう発想で至った結果こうなったというのを伝えればよいのではないか。
- きっかけづくりになる事例を各社に聞き、イラストを多くして見やすい資料を希望する。
参加者
青木防災株式会社 青木 俊輔 様
安藤電気工業株式会社 安藤 慎也 様
ウィ・オール 北川 麻弓 様
株式会社岩電 齋藤 慎太郎 様
株式会社ウェックス 渡辺 淳司 様
株式会社正和電機 細井 敬一 様
協栄電工株式会社 千田 新一 様
甲南防災株式会社 平井 勝己 様
シノハラ防災株式会社 篠原 徹 様
第四電設株式会社 斉藤 卓也 様
福知山電気株式会社 西村 一起 様
ヤマシタ電気株式会社 山下 幸司 様
有限会社佐々木防災 佐々木 雅司 様
井上代表理事より
大変貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。
当会は、国とのパイプで皆さんに役立つことができると思います。そしてDXの事例を作って、メリットをどれだけ用意することができるか等、やるべき事は多々あると思いますので、各委員会の活性化をさらに進めていきたいと思います。
《当日の式次第》
■14:00~14:05 開会挨拶
■14:05~14:30 委員会・分科会活動紹介(25分 各5分)
・消防防災DX推進委員会
・設備共通EDI推進委員会
・ITES分科会
・設備業DX推進委員会
・バリューアップ(VUP)委員会
■14:30~15:30 「電子申請から始まるDX」(60分)
・消防防災DX推進委員会
■15:40~16:40 「設備業でEDI(受発注のペーパーレス)は実現するのか?!」(60分)
・設備共通EDI推進委員会・ITES分科会
■16:50~17:50 「設備業におけるDXの進め方」(60分)
・設備業DX推進委員会
■17:50~18:00 総括
【お知らせ】◆ 懇親ゴルフコンペのお知らせ
※次回開催予定:2023年1月18日(水) 第71回定例会